今朝のよみうりテレビ系「ウェークアップ」で、「旧皇族を独自取材」という話題を扱っていました。
最近回顧録を出版して、よくメディアに取り上げられている旧伏見宮家当主・伏見博明氏に取材したものです。
伏見氏は15歳の時に皇籍離脱し、現在90歳。皇族として育った戦前・戦中と一般国民になった戦後の環境の激変など、その回顧録には確かに興味深いところがありそうです。
ただし、この番組の取材VTRには、大いに疑問を感じました。
番組VTRでは、「日本の天皇は126代例外なく男系継承」だの「宮家の役割は男系継承を支えること」だのと、男系派の主張そのまんまの解説ナレーションが入っており、「天皇は男系継承すべきで、それを支えうる旧皇族はちゃんといらっしゃる!」と世論誘導しようとしているような意図をありありと感じました。
ところが、番組中では一切触れていませんでしたが、伏見博明氏の子は娘が3人だけなので、伏見家は当代をもって断絶することが確定しているのです!
旧皇族の家だって側室がなければ男系継承は無理なわけで、皇籍離脱した11家のうち、まだ男系男子で続いている家は5家だけです。
その5家に、男系固執派が言う「旧皇族の皇籍復帰」(正しくは「旧皇族系国民男子の皇籍取得」)の候補者となりうる男子は8人だけで、しかも当人もしくは保護者にその意思があると確認されている人は、ひとりもいません。
いたとしても、それを養子として受け入れる宮家がないし、あったとしても憲法が禁じる「門地による差別」にあたるため、実現不可能です。
これに対して、男系派は一切反論ができていません。
伏見博明氏は番組のインタビューで「“一般人”が宮家に入るのは難しいとご経験から言えますか?」という質問に対して、「まあ大変だと思いますね。一般の方はなかなか、分刻み秒刻みみたいなスケジュールもあるし、言葉遣いも多少違うしかなり難しいと思いますけどね」と答えています。
ここでいう「一般人」には、一般国民として生まれ育った旧皇族子孫の男子も当然含まれているはずですが、男系固執派はなぜか、旧皇族系の男子は一般人ではないと考えているようなので、これも注意が必要です。
しかもこの後、VTRでは静岡福祉大学名誉教授・小田部雄次が出て、愛子さまは「男系女子」だから中継ぎにして、その間に悠仁さまに男子が産まれたら、次はその子に継がせれば男系継承がさらに続くなどと発言していて、それが「結論」のようになっている始末。
ここでは女系公認の側の意見は一切取りあげておらず、これは明らかに、伏見氏の回顧録出版を利用して「男系継承」を推そうとするVTRだったわけです。
ところが映像がスタジオに切り替わり、司会者が「旧宮家の子孫を養子に迎えるというプランもありますが」とコメンテーターの関西大学特別客員教授・小西美穂氏に振ったところ、
「血縁関係はあるでしょうけれども、果たして国民感情としての理解を得られるかってことがありますよね。それと本人の意思っていうものも明確に皇族になる意思を示していかないといけないという面もあると思うんです。ですからこれ、理解が得られるのかという点で私は難しいと思います」
と、ほぼ全否定!
さらに読売新聞特別編集委員の橋本五郎氏も、
「皇位継承についても、このまえ時期尚早だみたいに有識者会議でありましたけど、そんなことはないんで、もっと堂々と議論した方がいいと思いますね」
と、直ちに議論をすべきと言い、明らかに男系を推すような発言はしませんでした。
もしスタジオに男系派のコメンテーターがいたら、この番組は完全に男系固執プロパガンダになっていたでしょう。
スタジオに男系派がいなかったのが、この番組の良心なのか、単なる偶然だったのかはわかりませんが、油断も隙もあったもんじゃありません。